今を表す言葉とそれに反応する人々(2)

(3)貧困、貧困層貧困率、そして生活保護
 英語に「poverty」という単語があります。辞書を引くと「貧乏、貧困」とあります。これに関する熟語として、「poverty line」もしくは「poverty level」という熟語があり、これは「貧困(所得)線」との訳され、意味としては「生活維持に必要な収入の最低限度」だったりします。
 一方で最近話題になっている所得格差と貧困層の拡大にまつわる話では、経済協力開発機構OECD)においてその加盟国における関連の調査が公表されており、SAPIO11月23日号でもこの関連の話が取り上げられていたりします。この中で所得格差を表す指標として、ジニ係数(Gini coefficient)と相対貧困率(relative poverty rate)が提示されています。それぞれの用語の定義については、id:nami-aさんがすでにはてなキーワードとして編集されています。特に相対貧困率の定義をOECDの当該レポートから引くと、

Poverty rates are defined as the share of individuals with equivalised disposable income less than 50% of the median for the entire population.

とされており、全人口の中間値である収入(手取額)の50%未満の収入の人の割合を指すと定義されています。この50%のラインが「poverty line」と同値であるかどうかはどうなんでしょうか。
最近のこれらに関する話題について書かれたもので使われている「貧困層」はこの50%以下の層を指している場合が少なからずあるようなのですが、こういった背景を知らず、日本の貧困層は全人口の15%以上だとされたときの受け止め方は知っている場合の印象とかなり異なるのではないかと思ったりしています。
あくまで収入格差を示す指標ですから、同じ15%でも中間値が600万であれば、貧困層が300万以下の人が15%いることになりますし、400万であれば、200万以下の人が15%ということになります。
 この収入には生活扶助費、つまり、年金や生活保護費が含まれるようですが、この生活保護に関してはR30さんが、生活保護は国の責任だとか言ってるご都合主義者どもに告ぐ: R30::マーケティング社会時評というエントリーを書いていらっしゃいますが、生活保護の受給資格というか認定基準が文中において示されていないことなどにより、エントリーのコメント欄や、id:finalventさんのコメント欄(http://d.hatena.ne.jp/finalvent/20051119#c1132378192)において、指摘するコメントがあったりしているようです。おそらくこれも、エントリー中の「ホームレス」については、私のイメージでは、普通のホームレスとは住所不定かつ働こうと思えばフィジカルには働けるのだけれど(なんらかの理由で)働かない(働けない)人つまり生活保護の対象ではなさそうな人ということになるのですが、R30さんが文中で例示している「カネを巻き上げられるホームレス」というのは、就労不可能でどこかの宿屋の住所を住民登録しているホームレスなのかも知れませんがあのエントリーではそのあたりはよくわかりませんでした。
特に、

 ホームレスの流動性の高い首都圏や近畿圏では、首都圏ならおそらく東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県の1都3県が、包括的な自立支援活動をやっているこういったNPOなどとも共同でホームレス自立支援と都市計画を合わせた広域政策大綱をまとめて実施しなければ問題は解決しないだろうし、地方においては公共事業に頼らない民間主導の雇用創出策とセットで生活保護を考えなければいけないだろう。

という記載文中最後の方にありますが、R30さん自身、別途文中に「生活保護というと「働けるのにもらってる人がいた」とか不正受給の事例を挙げて非難したり」と書かれているところを見れば、支給基準や資格などをご存じのようであるのに、ホームレスや雇用創出対策のことをここで示唆されているのはどうしてなのだろうと思ったりします。

(その3)に続く。