暴動と階級社会とブログと

 今回の暴動のおかげといっては変ですが、いくつかのフランス人在住者のブログを知ることが出来ました。
 その中で、はてな界隈で最も注目を集めているのが、kanacさんのはてなブックマーク - パリ郊外の暴動のこと - パリからはてな日記のようですね、96ユーザがブックマークされているようです。

 この方の捉え方は、私や、ma_cocotteさんとは異なるようです。のっけから「移民の暴動」とされているところがとても気になります。

 階級社会について以下のように言及されています。

 フランス社会は貧富の差の激しい、硬直した階級社会である。わたしの見てきた限りでだけど、内田先生の書かれるとおり、確かに、フランスではお金があるだけでは上流になれない。

 20%近い消費税を徴収し、家の面積等に応じた住民税を取り、また、所得税も高く、そうやってかき集めた税金を働かない人々にも再配分して最低生活費を保証しているこの国を貧富の差が激しいと言ってしまったら、その他の先進国はどうなるのでしょう。

 グラン・ゼコールに行ったものだけが出世して、その中でもとりわけ難関校の卒業生がフランス社会を牛耳ることが出来る状況は、日本の東大を中心とした学歴社会の比ではない。

 それではサルコジさんはなぜ大臣をし、さらには次期大統領候補とされているのでしょう。(ビルパン首相は政治家ではありません。)

フランスでは、学歴はネタにできる幻想ではなく、生き抜くべき現実である。

 就こうとする職に求められる経歴の一部として当然学歴は存在します。フランスでは学歴は飾りではなく、キャリアの一部です。そのキャリアを認めない世界の方が理想とされる社会なのでしょうか。

 この国では、グランゼコールを出ている人が国の物質的文化的資本を独占している。ディプロムはそのグループに参入するためのパスポートだ。だからそれを持っていない人は嫉妬を丸出しにする。

 ルイヴィトン・モエ・シャンドングループや、ファッション業界なども、グランゼコール出身者がすべてを占めているのですか?経営者に比してデザイナーやモデルらが手にする報酬が過少評価されているということでしょうか。ワイナリーの経営者もそうですか?レストランのシェフは?スポーツ選手達は?

 じゃあ生まれが貧しくても勉強すればいいじゃないということになるが、難関校に行き着くまでのルートが既に、エリートの子息でないとなかなか入り込めないような仕組みになっている。親に財産や学歴があるのとないのとでは、後者の方がグランゼコールにたどり着くのに圧倒的に不利である。そうするとますます、社会のどの層に組み込まれるかが、子供の頃から決まってしまう。社会はますます閉塞感を増し、硬直していく

親に財産や学歴があるかどうかですか? 社会は親が与える環境にまで関与できるのですか、また、関与すべきなのですか?
私は、自分の子供に出来るだけ良質の音楽を聴くことが出来る環境を与え、絵を描く道具を与え、書物を用意し、また、勉強のサポートをしたりします。それは財産や学歴があるからという理由ではなく、自分の子供の可能性を見つめることが楽しいからです。新しいスーツを手にすることを止め、こういったことにお金を使い、自分の趣味の時間を減らして、子供に付き合うのです。また、将来、我々両親が読んだ本や教材を子供が手にするかも知れません。が、それは環境があるだけで利用するか否かは子供の選択です。
それを社会の閉塞感や硬直性の理由になさるのですか?

 私は日頃から、本当にフランス人は嫉妬深い人が多いなと思っているが、こういう、少々努力したくらいではまるで報われないような社会の仕組みも大きく影響していると思う。

 まるで報われていない人は誰ですか?少々の努力をする人よりも多大なる努力をした人が報われる世界は正常なのではないですか、そして、多大なる努力や犠牲を払う人もたくさんいるということを忘れてはいませんか?学歴を得るためにはかなり真剣に学を積まなくてはならないという社会であってはいけませんか?

 推薦で入学した低所得層地域出身の学生には、入学後、公私にわたって学校生活の相談にのるアシスタントが個別につくという。例えば休日に美術館に一緒に行ったりまでするそうである。担当者の方によると、一般入試のフランス人学生、親もエリートで、美術館に連れて行ってもらったり、家に沢山本があったりという文化資本に恵まれて育ち、当たり前のようにシアンス・ポーに入学してきた学生達と、推薦枠の学生達では、それまでにしてきた体験があまりに違う。常識だと思っていることも違う。だから、その違いで学生生活につまずかないように、最初の1年くらいは推薦枠学生をサポートする必要があるのだそうだ。
 私はこの話を聞いた時、実にいい話だとは思ったが、ここまでしなきゃいけないくらい、フランスの社会格差は深刻なのだなとため息が出たものだ。

 親がエリートでないと、美術館には連れて行ってもらえないのですか。入館料無料の日もある美術館ですよ。それに、書物が必要ならば、図書館だってあります。むしろ、そんなことも自らしない学生にまでトップ校が門戸を開き、しかも、奨学金が出るためほどんど学費がかからず、さらにはサポートまでしてあげるサービスのよさに驚きませんか?それは社会が追いつめられているのではなく、社会の懐の広さだとは考えられませんか?

確かに、たとえ、郊外の移民の多い地域から、この推薦枠でシアンス・ポーのディプロムを取得し、社会に出た時に、シアンス・ポーのディプロムに対する嫉妬で倍加された人種差別に出会うにしても、それは彼らの人生を変えるチャンスになるだろう。すごく精神的な強さを求められるとは思うけれど。

この場合の人種差別ってなんですか?

 そして、このエントリーをブクマされたはてなユーザーの方(id:wapple id:tkamu id:rashu id:kamiaki id:rafale id:pongpongland id:Jonah id:nodokaynihs id:Hukusui id:rgyxy272 id:snailramper id:ykurihara id:tw1ggy id:taigo id:Psychodelicate id:t-tjm id:fumi_o id:cvyan id:rikuo id:gankun id:fourth id:lipz id:ussy id:chariot98 id:facet id:okusim id:str017 id:John_Kawanishi id:nekotank id:cliche id:retlet id:hosi id:Masao_hate id:fullry id:kawaipon id:eliwo id:testin id:youpy id:PuHa id:watapoco id:k-s1r id:kanose id:k3jaco id:nmti id:tks_period id:koutaki id:uboshi id:chacha72 id:faithis257 id:swan_slab id:afighter id:terazzo id:motamota id:emiur id:wacok id:nopi id:stella_nf id:onionskin id:takki7  id:tomozo3 id:h-hirai id:zener-hour id:moleskin id:tzk id:ogiso id:janvier id:rahoraho id:hyougen id:wetfootdog id:ryu-ten id:kinushu id:kmizusawa id:dodolaby id:koji-kate id:lepantoh id:amgun id:zou7of9 id:yskszk id:anhelo id:stein id:gachapinfan id:flak id:ahare id:nobody id:yukatti id:nyaofunhouse)、フランス在住者でも今回の件では、そのとらえ方はさまざまです。
 それらの方々やまた、日本で今回の暴動を取り上げた方のブログを是非、いろいろと眺めてもらえればなぁと思います。すでにすべてチェックされた方もいらっしゃるかも知れませんが、私やma_cocotteさんが心配していることにも関心を持って頂ければ幸いです。
 
 以下に、いくつか並べておきますね。
 kanacさんのエントリー http://d.hatena.ne.jp/kanac/20051109#p1
 ma_cocotteさんのエントリー
http://malicieuse.exblog.jp/m2005-11-01/#3743936(事件の発端がぼやけてきたぞ。こりゃ、いつもの展開かもね。)
http://malicieuse.exblog.jp/m2005-11-01/#3748808(「移民」って漠然と文字にされても、語られても、)
 http://malicieuse.exblog.jp/m2005-11-01/#3753709(サルコのお願い、聞いて。聞いて欲しいのぉ♪)など
 猫屋さんのエントリー ね式(世界の読み方): パリは燃えてはいないのだが。
 ヤマグさんのエントリー フランスにいて思うこと:フランスの暴動について
 kmiuraさんのエントリー 2005-11-07 - kom’s log
 などなど。他にもいろいろあるようです。
 私のエントリーは、
 例の暴動の件、いやぁ、やっぱフランス在住者は同じ心配を - antiECOがいるところ
 一部で夜間外出禁止令も出されるようですけど - antiECOがいるところ
 フランスの暴動についてはわからんとおっしゃる切込隊長が正解だと思いますよ、マジで。 - antiECOがいるところなどです。
 国内のエントリーは、上記のそれぞれにあったりしますので、ここでは割愛します。
 
ところで、ヤマグさん、

この見えない壁をはじめて経験したのが、学会でのボランティア。フランスでの学会で、英語を喋る良い機会であることと学会費用が安くなることから、ボランティアをした。で、暇も合ったので、組織表を作ったり仕事のフォーマットなどを作っていたら、幹事の人からそんなに働かないでくれと言われた。あまり働くと君にお金を払わなくてはいけないと。ほう、これがフランスかと。まさに、階層社会を目の当たりにした感じだった。

と階層社会を言及されている部分ですが、これは、お書きになられていることだけから判断すれば階層社会とはおそらくというかほとんどいやまったく関係ないのではないでしょうか。

 フランスでは、労働関係では厳しい規則があります。ボランティアをお願いするのであれば、最初に依頼内容を示した上でその仕事のみをお願いし、通常、お願いした範囲を越えて作業を依頼させることは出来ません。もし、やむを得ずその範囲(労働であれば契約条項)を依頼する事態であればもちろんのこと、この方のように本人の意思で仕事をしているのを管理者側が知りえた場合でそのまま作業を黙認した場合、相当の報酬を支払わなければその管理者は罰せられてしまう恐れがあるためです。フランスでもし働く意思などをお持ちでしたら、その点を理解しておかれた方がよいと思います。

 最後に、とある場所に書いた私のコメントです。

 若者と接するとき、毅然とした態度で対峙する場合と寛容な態度で包み込む場合とがあります。 この国では、親子であっても、親は毅然とした態度で子供に挑む場合がほとんどです。 彼らが大人になるまでは、親に逆らうことは許しません。必要以上に甘えることも許しません。 甘えるかわりに徹底的に議論します。厳しく叱ります。それが親としての愛情なのです。そして、そうやって子供達は鍛えられます。
 一方で、フランスに根っこがなかった親の場合、子に対して寛容だったり、口数が少なかったりします。日本の場合もそういう傾向が強いと思います。
 そして今回の場合、フランス人の親がそうであるように、政府も毅然とした態度で若者達に対峙しました、大人ではないものに対峙するいつもの態度で。
 暴動を起こした彼らはある意味寂しさを抱えた若者達だったりもします。シャイな自分達の親が表現しないような直接的な表現の愛に欠乏している若者達がそこにいます。
 そういう彼らに対し、ある意味突き放すような対峙の仕方はマッチしていなかったのかも知れません。
 かといって、彼ら以外に圧倒的多数の子供達がいて、大人達の態度を見ています。その姿勢に一貫性があるかどうかを見ています。なので、今回だけ抱きしめることは出来ないのです。
 これを、民族性とか同化失敗という言葉で整理しようとすることには無理を感じます。宗教は関係ありません。長い間そうしてきた、親と子の接し方なのです。
 なので、彼らが自ら落ち着くまでじっと大人側は見守るしかないのかも知れません。そして、彼らを抱きしめるのは彼らの親の役割です。

<追記>
 新たにエントリー起こしました。ちょっと見えました。でもそもそもの数の威力が...。中身でなんとか。
 暴動にまた燃料投下かよ、orz - antiECOがいるところ