バレンタイン

 バレンタインという行事とはまったく縁がなくなってどれくらい月日が経ったのだろう。いや、行事そのものはどこでもあるのだが、こちらでは主客逆転、もらう側ではない。
結婚という節目、そして海外生活という節目ですっかりと蚊帳の外。それでも、お返しに頭を悩ます必要がなくなって久しいことを良しとしよう。

 とても若かった頃、見ず知らずの女の子から突然手渡されるあれは、ちょっと感動ものだった。

 大学生以上となると、義理と本気の境目、グレーゾーンが段々と広がっていき、どのようなリアクションを取るべきかなどなど、対処を誤ればそれぞれでややこしい問題に突入するという純粋に嬉しいという気持ちからはどんどんと離れていった。

 で、義理チョコ中心、あぁ、今日はそういう日だったかというほぼ関心の沸かない時代に突入。

 そして、今、どちらかというと、男性から女性に何か感謝の気持ちをするという環境にいる。ちょっと雰囲気のよさげなレストランの予約をしたとかしないとかの話を小耳にはさんだりすると、こういう話は女性の間でもおそらく伝わっているのだろうなぁなどと思ったりする。

 クリスマス、新年、ソルド、バレンタインと試練は続く、どんよりと曇った寒いパリの冬。あぁ、春が待ち遠しい。