ブログ時評によるフランス暴動の話

 私の予想とは1週間ずれました。
 ところで、

 中野真紀子さん訳のダグ・アイルランド「フランスはなぜ燃えているのか」は人口の1割以上を占める移民と子孫たちが郊外に特別に建設された高層団地に住まわされ、希望を持てない状況を説いた上で、サルコジ内相の「社会のクズ一掃」発言を解説する。

と中野さんの訳を引かれていますが、これでは、まるで、すべての移民系の人が「特別に建設された高層団地」に住まわされているような印象を与えていますね、実際はそうではないにもかかわらず。
 また、これらの高層団地が当時祖国を離れパリに移り住んだ方を含めた住居のなかった低所得者の人々のために用意されたものである旨も説明がないようで。
 ある程度以上の収入を得て、これらの団地以外に暮らすようになった移民のみなさんも少なからずいて、パリにもそういった人々がたくさんいるのに、そういった部分について触れないのはフェアではないように感じます。
 ああいった団地に暮らす人々がいて、そこには問題があるのも事実、そして、そうでない移民の方々がいるのもまた事実。
 団地にいても車に火をつけて騒動を起こした若者がいるのも事実、騒動を起こしていない大多数の若者がいるのも事実。この大多数の若者の中にも政府のやり方に反発を持つものが多くいるもの事実。
 ただ、600万人近い移民系の方々が一括りで語られることにはどうしても違和感が残ります。
また、

人口がこれだけある大勢力から一人の国会議員も出していないと言われるのだから「階級社会フランス」の面目躍如である。

と書かれていますが、移民と言っても、ハンガリー系、ポルトガル系、イタリア系、マグレブ系、トルコ系、パキスタン系、中国系、ベトナム系などなど出身国は50カ国以上に及び、また、マグレブ諸国の中でも最も多いアルジェリア系ではかなりミックスが進んで25%以上に及んでいるということはご存じないのでしょうか、これを全部ひとまとめにして人口の一割という勢力なのですが。そしてサルコジ氏はハンガリー移民系だということも。
そして、フランス国籍を有する大人ならば平等に一票が与えられているというのに、国会議員と階級社会が結びつけられるのはどういった理由なのでしょう。 

 ところで、今回の若者達はフランス語に不自由しません。だからこそ、サルコジ氏の言葉がダイレクトに彼らに届いたのですから。言語の壁に悩む日本の移民の状況とは簡単には比較できないのではないでしょうか。

 以上、仏の暴動と名神7ブラジル人死亡事故 [ブログ時評40] : ブログ時評仏の暴動と名神7ブラジル人死亡事故 [ブログ時評40]について思うところ でした。