暴動と過ごす三連休

 今日になって初めて父親から「大丈夫なのか?」との連絡がありました。ずいぶんと呑気な身内ですが、その呑気さに随分とこれまで救われてきたので、まぁ、こんな感じです。それよりも、こののんびりムードのじいさんまでをも不安に感じさせたのは、今日のどこの放送局の報道だったのでしょうか?今度聞いてみましょう、おそらく覚えていないのだろうと思うのですが(笑)。
 
 昨日の「貧困層と聞いてあなたの抱くイメージは?」ってはてなで聞いてみる? - antiECOがいるところは、エントリーそのものの長さもさることながら、コメント欄の長さもこれまでで最長、そしてその充実ぶりにコメントをお寄せいただいた方には大変感謝しております。私自身も大変勉強になりました。初めて読まれた方は...ちょっと大変かも。
 もっと、もっとフランスの事が知りたいと思われた方は、「猫屋さん」(ね式(世界の読み方))、「ま・ここっと」さんのブログ(「Tant Pis!Tant Mieux!そりゃよござんした。」http://malicieuse.exblog.jp/)、ご覧になってください。(私もサルコジさん出演の番組、見ちゃいました。このまま暴れ続ければ続けるほど、「はい、私がその「不良少年」です。」と名乗り出ることになってしまうことに気づかないのだろうか。)
 
 私も以前ちょっと触れたし、ま・ここっとさんも述べているフランス国民の純血度。大いに交わっているわけでして、混ざっていない方が目立つくらい。そのくらい他の国とは違うでしょう。よく「ニューヨークは人類のるつぼ」という表現がありましたが、あちらは一都市、米国全土の話ではありません。それに、いるのと交わっているのとは違うわけで。
 
 ここで、
 「移民系の若者が暴動を起こした。その一因として階層社会の閉塞感、移民系の人々への差別と抑圧などが考えられる。そして、そのための対策が必要。」というシンプルなロジックに戻ってみます。
 
 これをこのように変えてみます。
 「フランスのシテなどと呼ばれるイスラム系移民の比較的多く暮らす複数の地域で、そこに暮らす若者の一部が車に放火するなどの騒動を起こした。ストラスブール郊外では以前から同様の騒動があったが、今回のように一時期に集中的に続くのは今回が初めて。彼らには(シテ出身者であること等の理由による)差別や(警察等による)抑圧に不満を抱いている旨の主張をしているものもいるが同地域の若者にはそれを醒めた目でみつめる者も多い。政府では同地域での就職率の低さ等社会的な要因があることなども考慮し、有効な対策を講じることを検討しているが、犯罪は犯罪として毅然とした態度で臨む姿勢には現時点において変わりはない。」
 
 「シテの若者は評判が悪い」というのと、「シテには評判の悪い若者が多い」というのは、同じようで違います。
 「移民が暴動を起こした」というのと、「移民が多く住む地域で暴動が起こった」というのも、同じようで違います。
 「移民への差別や偏見がある」というのと「移民が多く暮らすシテ出身者に対する差別や偏見の傾向が見られる」というのも、同じようで違います。
 
 先祖代々農園や牧場を営んでいたり家業(なんでもいいです。自動車修理工場でも美容院でも薬屋でもスーパーでも建設業でもブティックでもなんでも構いません。)を続けている事業主がいます。ここ数十年で移り住んできた移民系の方々が、その事業主になることは困難です。そこんちの子供が家業を継いだりします。階層社会が存在するとすれば、その一部です。そしてその事業主が雇用する従業員よりは上流社会に属するかも知れません。でも、これを階層の硬直化と呼ぶのには違和感があります。
 株式を公開している企業があります。いわゆる大企業です。職種つまりそのポストにより技能、経歴が問われるでしょう。
 その才能や実力が特に問われる世界もあるでしょう。音楽、美術、演劇、スポーツなどの分野です。デザイナーなどもこの分野でしょう。
 さて、差別や閉塞感というのは、具体的にはどういった分野、職種でのどういったケースであるのでしょう。しかも一般論として整理が出来るレベルのものとしてです。一般論としての整理が困難であれば、政策としての対応も複雑化するでしょう。
 
 シテ地域の若者就業率や学校のドロップアウトが多いのは事実としてあるようです。就業率とドロップアウトの多さは相関があるでしょうから、こういった若者に職業訓練や再教育の機会を提供する政策はおそらく有効的なのでしょう。
 でも、ドロップアウトの理由を差別や抑圧、閉塞感、階層社会に結びつけるロジックとはなんでしょうか。そこに文化資本という背景を持ち込むのであれば、そのときには、ドロップアウトした若者の「ドロップアウトした要因」と正面から向き合う必要があるでしょう。これには家庭や仲間(もしくは反対に孤独)といった小さくはない影響要素が排除できない限りはケースバイケースのきめの細かいケアが必要とされる可能性も少なくないでしょう。(統計的にはこの地域の子供は兄弟数が多いようですから、これをもって「その健やかなる成長に必要なだけの親の愛情を受けることが出来ずに育ったことが(ドロップアウトや非行に走ることの)一因として無視できない」系の定番の分析が出来るかも知れませんね(笑)、よくわかりませんが、そんな感じの分析を日本にいたときにはよく見たような記憶が...。一般論って概してこんな感じなんでしょうか?この理屈だと、少子化が進む日本は非行、ドロップアウトの少ない未来が予想されたりして、ホンマカイナ。)
 
 差別や階層社会を問題にされる方々(万国のニート、フリーターたちよ、団結せよ!: カトラー:katolerのマーケティング言論Archives - 内田樹の研究室等々)には、今フランスでどのような差別があって、それがどのように階層社会の閉塞に寄与しているかを示していただけると議論が先に進むように思われます。若者の将来の芽を摘むような行為は許されるべきではないでしょう。もしそこに文化資本のことを考えなければならない(mirai-city.org -&nbspmirai-city リソースおよび情報)のであれば、極論、暴論的に言えば、すべての子供を生まれた時にその親から引き離し、同じ条件の環境下で育てればいいのでしょうか?