finalvent氏のこの日の日経評価に異論あり。

 
<追記:finalvent氏のご指摘により、表題を変更しました。私自身の「イチホゲ」の理解が少々違っていたことが原因であり、かつ、「イチホゲ」の(おそらく)発案者であるfinalvent氏の理解を超える理解などあり得ないことから、敬意を表し、変更するものです。なお、finalvent氏の反論についての私のレスを本エントリー文末に追加しました。>

今日の新聞各紙社説は… - finalventの日記

 日経の社説がよい。ちょっと認識エラーがあるようではあるが。

 他は基本的にどうでもいい。

 朝日より読売のほうが最近、ひどい。

●日経社説 〔05総選挙改革を問う〕民営化で分かれる「郵政」への対応

 たるなぁと思ってみていて、ふっと目が覚める。おやっ、これはよい社説だ。

 民社党の郵政対策について。

これはちがうと思う。
 
特に日経の社説のほうが最近、他紙よりひどい。
で、その根拠というか、さしたる根拠ということでもないが、これは私個人が感じることだけなのかも知れないが、finalvent氏は、今回の日経の社説の以下の部分を含め評価しているのだが...。
 

「あらゆる選択肢を検討する」というが…

しかし仮に民営化を選ばず公社のまま残す場合には、電子メールの普及などで郵便事業が再び赤字に転落したときに郵貯簡保の黒字で補うしかない。はなはだしい場合には税金で助ける事態にもなろう。
 
「国家公務員の身分を変えない」ので…

また、国家公務員の身分を変えない限り、給与は地方では民間より高いなど賃金の硬直性が残り、人件費が経営を圧迫する可能性も大きい。
 
結局民営化しないから法人税は…

さらに、郵政公社のままなら法人税の支払い義務がないなど、年間数千億円の「見えざる国民負担」が残る。

で、「電子メールの普及などで郵便事業が再び赤字に転落したときに」という前提はどうだろうか。

 現時点で電子メールは想定されるユーザに十分普及しているとは言えないだろうか。今後、さらに電子メールが普及して郵便事業が再び赤字に転落するということは、今郵便を利用しているユーザ、ということは、企業などにはある程度平衡状況に近い程度に電子メールは普及しているのだから、こういった面で爆発的な電子メールへの移行が期待できるわけでもなく、例えば、時候の挨拶などに郵便ではなく、電子メールが今後普及していくとという前提に成り立つと想定してみるが、これはどうだろう。
 自分の例が世間一般に当てはまるかどうかは難しいところだが、例えば今後定年退職する層を考えた場合、リタイア後、職場で利用していたのと同様かそれ以上に電子メールなどを使用するということはあり得るだろうか。
少なくとも彼らには資金も時間もある。なんらかの趣味も始めることになる。手始めに挨拶状なども出すことだろう。今まで時間がないからとためらってきた彼らも、時間がないという理由を失った時点で、一筆とることを果たしてためらうだろうか。
 これは、今の若い世代とはおそらく感覚が異なるので彼らの理解を期待することは難しいのだが、直筆と電子メールの間に格式というか、気持ちみたいなものの差を感じるのだよ。
で、自分が、挨拶状や近況報告をするにあたって、もともとの筆無精はともかく、そうでない人は、ここは一筆となってもそれは自然な流れだと思うのだが、これは、感覚の違いなので理解できないと言われればそれまでなのだが。
 いや、今後電子メールの便利さに目覚める人もいるかもしれないが、一方で時間がなくて申し訳ないなと感じつつ電子メールを使用してきた人も少なからずいるわけで、そのあたりをひっくるめて考えれば全体としては、「平衡に達した」と考えるのが普通なのではないかね、ということ。なので、それを理由に「郵便事業が再び赤字に転落」というのはどうかと。
 それに、それが理由として成り立つならば、国営化しようと、民営化しようと、いずれにせよ、赤字転落するわけで、だが、国家として郵便事業ユニバーサルサービスを含め必要というのであれば、民営化よりも、今の公社の形で国が守りつつ継続すべきとの結論に落ち着くのではないのだろうか。それとも民営化すると郵便事業が赤字化しない秘策でもあるのだというのであれば、その可能性をまずは示すべきだろう。公社のままなら赤字というところに無理矢理感が漂う。
 
「また、国家公務員の身分を変えない限り、給与は地方では民間より高いなど賃金の硬直性が残り、人件費が経営を圧迫する可能性も大きい。」という部分を、なぜ、finalvent氏が評価しているのだろう。
まずは、郵政公社の職員の給与基準を示しておこう。

職員の給与の支給の基準

  日本郵政公社法(平成14年法律第97号)第54条第2項の規定に基づき、日本郵政公社の職員(以下「職員」という。)の給与の支給の基準を、以下のとおり定める。

第1  職員の給与を定めるに当たって考慮する事項
 職員の給与は、その職務の内容と責任に応ずるものであり、かつ、職員が発揮した能率が考慮されるものとし、一般職の職員の給与に関する法律(昭和25年法律第95号)の適用を受ける国家公務員(以下「給与法適用職員」という。)の給与、民間事業の従業員の給与、公社の経営の状況その他の事情を考慮して定める。

 
 記事を書かれた人やこれを評価する人は、このような基準を知った上で書いているのだろうか。
この基準を見る限り、硬直化が実際にあるのであれば、それは運用の問題であって、ルールの問題ではない。労働組合等の力が強いのであれば、その点についても触れなければフェアではない。
 いや、肝心なところは別にある。どうも、郵便局員の賃金について批判的な人は、そもそも、彼らの仕事が今の賃金に見合わないと勝手に評価しているところにある。彼らの仕事内容からみてどの程度の水準の賃金が妥当であるかを根拠を示して批判すべきだろう。頭っから民間水準(しかも地方の)以下ありきでは、話にならないし、今後なり手もいないだろう、いや、海外発送小包の手続きや海外送金の為替レートすらろくにわからない職員だらけになってもいいのであれば別だが、といってもこの部分については、わかりやすい点だけほんのちょろっと書いただけで、この例示に対して真剣に突っ込まれても困るのだが。そこは、木を見て森を知るというか、まあ、そういうことで。
 今公社の経営が黒字なので、このような突っ込みしかできないという話であれば、よくわかる。
 
最後の「法人税は国民の見えざる負担」という点については、あえて何かをいう必要すらないだろう。
 
 
<追記>
finalventさんの追記について。(今日の新聞各紙社説は… - finalventの日記もとい、追記 - finalventの日記へのレスです。)
 
 少し誤解があるようですが、今回の私のエントリーは、郵政民営化論に異議を唱えることを目的にしているものではありません。かといって、郵政民営化は必要と主張するものでもありません。
 その理由は明確で、finalventさんが引用されていない日経社説の最後の部分がとても弱いと感じたからです。消極的民営化論といえばいいでしょうか。郵政公社のままだとコストが非常に大きく、早く民営化して、安易な国債購入の見直し、経営効率の上昇を図らないとコストが非常に大きく、国民の不利益という結論づけ部分です。

公社のままのコスト大

 このようにみれば両党案の実効性に極めて大きな差はないようにも思える。焦点はやはり民営にするかどうかだろう。上場を狙う民間会社となれば経営の規律と職員の緊張感が強まる。その結果、安易に国債を買わなくなるし、経営効率も高まる。だからこそ岡田克也民主党代表も貯金と保険の事業について、いずれ民営化を検討すると何度か述べている。郵政公社のままでいるコストは非常に大きい。

 
そして、finalventさんは、この結論以外の4つの点を日経から引かました。
 
資金量減による人員削減。
郵便事業の赤字転落。
国家公務員の身分による給与の硬直化。
法人税の免除。

 日経のこの社説を評価するというのであれば、公社を民営化すれば、コスト削減につながるという点を評価していたのだと捉えられても仕方がないのではないでしょうか。
 
 この社説の主張は、「郵貯簡保の政府保証の廃止」の話が中心ではないと私は受け止めています。だからこそ、なぜ、この社説を評価されたのが不思議でしょうがなかったです。

 finalventさんが日経から引用された4点について、補足をしておきます。
 
(1)資金量減による人員削減については、資金量減が直ちに業務量減につながるとは思えません。政府保証の範囲が減ることによる有事のメリットはあるでしょうが、郵便貯金についてはその流動性の少ないことが問題視され、よって、その資金の市場への流出が期待されている一方で、上限が減ることにより、なぜ業務量に著しい変化を見いだせるのでしょう。参考にすべきは「のべ取り扱い量」、つまりは、口座残高の個人事の変化(もしくは個人貯蓄の平均振れ幅)の積算であって、動かない部分をカットしても、業務量に大きな変化は生じないだろうとの予測も成り立つでしょう。但し、これは、こういったデータが公開されて初めて成り立つ予測であり、日経の「資金が大幅に減ることによる、人員削減を示せ。」との話はかなり乱暴な提案、もしくは不親切な提案と感じます。
 
(2)郵便事業の赤字転落については、日経の「電子メールの普及などで郵便事業が再び赤字に転落したときに」とするのであれば、最低限その根拠を日経が示さなければ、反論はいくらでも出来るよということを例示したまでです。
少なくともしばらくは定年退職者が多い時代を迎えますから、そのご挨拶だけでも随分と増えるのではないかと思いますが、如何でしょう。メールで退職のご挨拶というのが一般的になるとは到底思えませんが。
 国民の人口が減り始めたらヤバイよという話であれば、わからないでもないですが、これは、あらゆる分野に言えることで、そのときにはそもそも、今の人員を確保することすら出来ないでしょうから、心配する必要はないんじゃないでしょうか。もし、人員を確保しようとするならば、移民の大量受け入れ、ただ、この点については、別途書きましたが、受け入れた分、相当量の郵便事業取扱量の増加につながると思います、フランスで見ていると。
 あと、年賀状や祝電ですが、電子メールが普及すればするほど、年賀状や祝電、時候の挨拶くらいは郵便で送付するかと意外と若い人すらも考えていたりするんじゃないですか。それと、上では書きませんでしたが、郵便のヘビーユーザーはあくまで女性であって、彼女達にとって、ちょっとしたイラストなどを気軽に入れられる葉書や手紙はそうそう捨てられるものではないどころが、最近は増えつつあるように感じています。
 
 なお、今後高齢化が進む日本で、郵便や(固定)電話の利用が増えるのではと私は感じていますが、これについて明確あるいは、ある程度の推測により否定できますでしょうか?出歩かなければ携帯は必要ないのですよ。そして、自由になる時間が増えれば、なんか今までとは違ったことをして過ごしたくなるものです。これまでリタイアされた方は、パソコンに余り慣れ親しんだ世代ではなく、老後に一つパソコンでも覚えて、インターネットや電子メールでもやってみるかといった方々ですが、今後は、電子メールやインターネットを十分やった方々がリタイアされる比率が高くなっていくことでしょう。さて、こういった方々が、職場を離れた後、どのような行動パターンとなるか、どこかで調査されると面白いのですが。以外とパソコンで連絡を取り合うのはもう結構という人が多いのではないでしょうか。用があれば、電話を掛けた方が早いし、人付き合いの減る寂しさもあるでしょうから。
 
 
(3)国家公務員の整理関係は反論を頂いていないようなので、追加レスはいたしません。
 
と、今回の私のエントリーで郵便事業に焦点を当てたのは、今回の日経の社説の中心点は、あくまで、郵便事業の赤字転落を中心としたコスト削減にあるからです。
 
このことを無視して、この社説の評価はあり得ないと考えるのですがいかがでしょうか。つまり、郵便事業の赤字転落があり得るのだから、コストを削減して、経済効率化に務めなければならない、そして、それは民間化しないと実現が困難という論調の根っこの部分です。
 
finalventさんはあくまで「自説の郵政民営化賛成論とその根拠」について反対論をお求めになっているようですが、この社説をはさんでの議論は避けたいと思います。
 
あくまで、この社説をどのように捉えたかというのが、今回の私のエントリーの主旨です。

ということで、finalventさんが郵政民営化に賛成されている(ということでいいのだと思いますが、)ことについて、特段意見があるわけではないことについて、ご理解頂ければと思います。