郵政民営化について脇道にそれた話をしてみる

 
フランスで暮らしてから郵便局を使う頻度(機会)がかなり増えた。月に数回のペースで利用している。例えば、日本から商品を取り寄せる際郵便為替による代金支払いを受け付けてくれるお店が多いことや、知り合いなどに小包などを送付する際、さらには、送付された小包を受け取りに行くなどなど。家から10分ほど離れたところに郵便局があるし、地下鉄の駅の周辺に1つずつの割合以上に郵便局はあるので、おそらくパリ市内に暮らす人のほぼ全員が徒歩圏内に郵便局を持っていることは確実だ。もちろんそれ以外にポストはあるし、切手はタバコの看板のあるカフェでテレフォンカードと同様に販売している。(ちなみにこのタバコ屋を兼ねたカフェは日曜祝日にはまず間違いなく営業していない。おそらく、してはいけないのだろうと思う。)
 
ところで、このフランスの郵便局、La Posteは、国営的公法人という位置づけで、職員の身分は公務員であることは各報道で広く知られているところだと思う。ちなみにフランスでは鉄道(SNCF)も国営である。
 
話を郵便局に戻すと、実は、その数はかなりあるのに、いつも郵便局には長蛇の列が出来ている。
そして、その利用者の多くが、海外への送金もしくは送金されたお金の受け取りや年金などであることに驚く。
なお、お年寄りや体の不自由な方は優先カードを保有しており、長蛇の列お構いなしに先頭に入り込むので、なかなか自分の順番がまわってこないので、暇つぶしに人間ウォッチングをするわけで、なので、列を構成する人々が窓口をどのように利用しているかを結果として知ることが出来たわけだ。
 
先日もアフリカ系の女性が海外送金の受け取りをしていたのだが、受け取った額に不満があったのかそれとも予定されていた金額よりも少なかったのか、受け取り後、数人の女性でそれを分ける際に、かなり揉めたようだった。その場でけんかでも始めるんじゃないかという勢いで大声でどなりあい、そして、それはどうやら送金主である旦那さんの悪口へと発展していったようだった。
 
日本から留学している学生さんもおそらく郵便局に送金してもらうケースが多いのではないかと思う。それは、何故かと言えば、フランスの銀行の口座開設は日本に比して非常に難しかったり厳しかったりするからだ。口座を持つことが難しい者にとって、口座がなくても受け取れる郵便局のワールドワイドな送金システムは最も大切なライフラインだ。
 
では、日本の場合はどうか。郵便貯金の口座の上限を引き下げるとかそれをすると職員の削減が必要とかの話があったが、仮に(郵便物の集配を実施しない)特定郵便局に限ったとしても、口座の上限額の変化が業務量にどれだけ影響を及ぼすのだろうか。為替や送金の手続き、書留や小包の受け付けなどが業務の多くを占めるのではないのだろうか。
 
今後、日本の少子化が止まらず、海外からの移民を多く受け入れるような事態となった場合、郵便局の窓口業務は相当増えるのではないかと移民国家フランスを見ていて思う。
 
そのとき、国家として、彼らの唯一のライフラインになることが多いであろう郵便局のサービスを民間企業という形で最低限以上のサービスができるかどうか現時点では予想がつかない。そして、今後高齢化が進んでいく際に、地元密着型の郵便局形態から、現在の銀行のような全国転勤族みたいな形態になった場合に、振り込め詐欺や訪問詐欺のリスクが高くなる可能性についても検討が必要ではないだろうか。
 
ところで、DHLなどの海外荷物の事業の関係であるが、あれは、受け取る際にはどこでも受け取れるが、送る際には非常に窓口が少なく、大口契約をしている企業には向いているが、個人ベースの荷物配送には向いていないように思う。
やはり、郵便局のグローバルネットワークが威力を発揮するが、窓口を民間化して維持するのは容易ではないだろう。国内のみ配送と海外配送事業では職員の知識やスキルのレベルが異なり、また、コンピュータネットワークの維持にも費用がかかるだろうから、コスト面で期待されるレベルの窓口を維持するのは容易ではないだろう。採算面をどのように試算しているのか興味深いところでもある。
 
まぁ、いろいろとうだうだ並べてみたが、郵政民営化の目的はどうもサービスの維持・向上や効率化とは違うところにあるような気がしてならない。なので、今度の選挙で日本在住の方が、どのような物差しで民営化の是非について判断するのかが非常に興味深い。
 
なお、簡易保険については正直興味がない。日本全体の保険事業についてわからないところだらけだ、不払いがどうのという報道もあったようだし。それよりも、郵便物の保険はどこがどのように扱うようになるんだろう。別会社になったりして、そのシステム変更にえらくカネがかかったりしないのだろうか?いわゆる運営形態変更による初期投資ってやつで。
 
まぁ、それにしても、民間企業になったとたんに、1年間転送サービスがなくなったり、不在者通知で受け取り期間が2、3日過ぎて取りにいったら、もう、送信元に返されてたなんてことにならないことを願うばかりだ。送付物がクレジットカードだったら、それだけでカード止まってしまうしね。
 
まぁ、他にも窓口取り扱い時間のこととか切手発行(販売ではありません)のこととか年賀はがきのお年玉の部分とかいろいろあるけど、とりあえずこんなところで。
 
あ、それと、最後に若い人には今はわからないかもしれないけれど、じじばばになってくるとなってくるだけ、また、弱者度が高いだけ、郵便局(及びそのサービス)がより身近にかつ必要になるので、関心度は高いと思いますよ。