面白いトラックバックを頂いたので続きでも書いてみようかと思う

昨日、梅田望夫さんの「コップ半分の水を見て - My Life Between Silicon Valley and Japan」について驚いた話を書いたところ、
シバチョさんからトラックバックを頂いた「IT産業に勤める人の職業意識 - シバチョが第1.5の人生を考える」ので、寝る前にもうちょっと書いておこうと思った。
 
直接その話に入る前に、今日面白いニュースを見かけたことを書いておこう。
それは、
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050628-00000512-yom-sociというニュース。
そう、あの、ホテルやレストランの格付けで有名なミシェランの赤本、緑本の日本版が2007年にも発行されるという話だ。
フランス在住者なら、割と高い確率で保有しているミシェランの赤本、果たして、フランス人スタッフが日本のレストランの味(いや、評価するのはもちろん、味だけではない。)をどのように格付けするのか、また、それが日本人の味覚センスにマッチするのかと別の意味で興味があるが、それよりもなによりも、こういったいわゆるアナログな作業の成果というのは実はITなどとは関係のないところで存在し、また、その存在感を誇示しているのだという点を面白いと思った。
  
ところで、梅田さんの話に戻ろう。
私も40代前半、梅田さんとは近い年齢だ。職についたころの時代もほぼ同じ。その頃、IT産業などという言葉はほぼなかったに等しいし、そういった方面に就職した連中は、少なくとも一流大学ではほんの一部にすぎなかった。いや、もちろん、電気、電子系や一部の計数工学系を出た連中が、大型汎用機を扱うメーカーである、IBM、NEC、富士通、日立、東芝などに就職し、半導体製造ブームに乗ってシリコンバレーに進出した奴らも多かった。
まぁ、そんな話はどうでもいい、というよりもそういったことを語るべき人間は他にたくさんいるから。
それから、当時のソフトウェア関係であれば、CSKなどがとても元気だった。当時の若い連中は今と同様朝までわいわいとやっていたものだ。
 
では、梅田さんの話はこういった企業を対象にしているのかと思えば必ずしも違うように感じる。IBMを別にして(というのもIBMが時代の変革についていっていないとはとても思えないので)その他の企業がいわゆるIT産業か、そして変革が必要な企業か、googleなどと比較して語られる企業か、といえばどうも違うからだ。
そもそも、郵便集配システムや銀行システム、研究所のメインフレームを手がけたり、インテリジェントビルの設計や施工を行っている企業とgoogleのような企業とを同じ土俵で捉えることに違和感がある。
シマンテックとLACやセコム情報システムを同じレベルで語ることが出来ないくらいに無理がある話だと思っている。
 
例えば、わかりやすい例で言えば、キャッシュディスペンサーを端末の一部に持つハードウェア込みの顧客管理システムを大規模に配備し、維持管理を行わなければならないような事業を担う企業は今後も必要であるし、同様の規模のシステムというのは、日本の企業が一流であればあるほど必要で、ダウンサイジングまでもを含めた成熟(セキュリティ強化関連もある意味成熟と言えるだろう)が求められるだろう。一方で、インターネット関連を含めた新たな技術開発も当然のことながら行われていくだろうが、そういった産業は別途新しい企業として淘汰されつつも伸びていくのだろう。
 
(まさか、将来はキャッシュレスの時代になってディスペンサーなんかいらないなんて話は勘弁してくださいね。日本から紙幣や硬貨の流通がなくなることは、欧米における個人による小切手による決済がなくなるくらいにあり得ない話だと思っていますから、いや、これは、技術的にではなく、現実論として。)
 
もし、梅田さんが例示でいう前者のような企業に後者のような企業の変革を求めているのであれば、それはそれでミスマッチのような気がしてならないのだ。
 
私がIT産業だけではないのではと言ったのは、すべてが同じ法則で動いているのではなく、かつ、人の営みには欠かせないものは恒久的に続くのだという単純な話とともに、IT産業の中も必要(ニーズ)に応じていろいろな役割の企業が必要であって、それにはスピードが求められる企業もあれば成熟が求められる企業もあってしかるべしなのだから、スピードばかりに目を向けていると、例え若い人であってもそのスピードについていく能力がある人ならばともかく、そうでない人も多いだろうから、じっくりと積み上げたい人には別途選択肢があるんじゃないですかと伝えたかったのと、じゃあ、若いときにスピードがある人が、40代、50代になったときに、今いる40代や50代と異なり、その頃も能力を落とさずにバリバリやれているかと言えば、それが、例え優秀な人間の集まりであるgoogleであっても、私個人的には懐疑的だということです。10年後にgoogleがインターネット関連でやるべきこと、やれるべきことが残っているんでしょうかねぇ。
今の20代、30代が、自分達が40代、50代になったときに、誰向けになんの商売をやって食っていくのかを考えれば、ある程度見えてくるのではないでしょうか。
国民全体が高齢化、少子化が進む国が手本にすべき国は、少なくとも今の米国のような姿ではないでしょう。
 
具体的言えば、調理師の話はミシェランの例で返答としては十分ではないかと思います。
そして、音楽や美術、コンサートを見に行く動機にインターネットは必要条件ではないでしょう、売り出したい道具としては有効かも知れませんが。
ただ、パリで見ている限り、路上パーフォーマンスの方が効果があるように思います。それにインターネットでモナリザの絵を見たって感動しないですよ、少なくとも私は。特にモネの壁一面の睡蓮の絵なんて、もともとネットでは無理ですしね。
 
ところで、私自身はIT産業を否定しているわけではない。ただ、危惧しているのは、芥川龍之介蜘蛛の糸ではないが、そればかりにぶらさがる姿が、梅田望夫さんの話を読んだときに目に浮かんだことにある。
 
ただ一握りの勝者。天上界に行けばすべてが望みどおり。しかし、現実の世界は、一握りの勝者の世界になったとたんに、その勝者を維持するだけの経済的背景を失うことになるだろう。一部の勝者以外に小銭持ちがいない世界では食うことや生きていくことが精一杯で、ITに落とすだけの資金が枯渇するのではないのだろうか。
 
日本でIT産業が生き延びるためには、1億人全員がある程度以上余裕を持って食っていける今の時代背景が続くことが必要なのではないかと感じているわけですよ。
 
それを変化のためにはボトルネックの解消をなんて話になるのであれば、優先順位としては、医療、食料、衣服、住居、バイオ、ロボット等々なんじゃないでしょうかねぇと。
だからといって、例えば、DNA解析やいわゆるゲノミクスの分野にはITは必要でしょうという反論があるかも知れませんが、それも生物学、毒性学、組織細胞学等々の研究が当然ベースなわけで、ITは主であって主でないでしょう。アルゴリズムなきままプログラム化ってありですか?
 
今、カネはどんどん新興IT産業側に回っているわけだから、5年後にはコンテンツサプライヤー側がそのカネを回収にかかる時代になるかもと考えるのはおかしな話でしょうか。
 
とまぁ、突っ込みどころ満載の話になってしまいました。
ということで、おやすみなさい。