お気に入りの一枚(12)

Touch&Go


「き、み、の、ぱあるのつぅめぇにもぉぉぉ〜
あくせぇぇるをふぅ ん でぇぇぇ ぅわぁざぁとぉゆさぁぶうぅってみぃるぅ
べぇいべぇぇ」
 
という私の鼻歌を、私の車の助手席に乗ったことがある方なら一度といわず、二度三度。
さぁ、恐怖の時間の始まりです。
 
そして、アクセルを踏んじゃうわけですよ、ちょっとタイトなコーナーを目前にして。
 
そして、お尻でくぃっと曲がるわけですね、そのコーナーを。くぃっとですよ、あくまで、くぃっと。(FF車でやってはいけません。FR車限定です。為念。)
 
このときの反応である程度わかっちゃうんですよね、私への信頼度?、ラブ度?、こだわり度?利用度?とか、いろいろと、その微妙な感じというか雰囲気が。
 
「マズ!このリアクションはヤバイでしょ」
 みたいな相手の動揺が見えたりすると、今日はちょっと主導権握れるかな、えへ、みたいな。

どこか遠くから、「ひきょうものぉぉぉぉぉ!」という声が聞こえている気がしますが、
えぇ、卑怯者ですとも。それがなにか?
 
そんなとっても重宝した角松敏生の「TAKE IT AWAY」。
 
日本レコード大賞優秀アルバム賞に輝いた「TOUCH AND GO」に収録されている秀逸な一曲です。1985年発売ですから、あれからちょうど20年ですね。いわゆる青春時代ですよ。(← うっ、かなり爺臭い気ガス。)
 

Touch And Go

Touch And Go

 
で、今日のお気に入りの一枚は、その「TOUCH AND GO」ではなくて、今の角松敏生。70-80年代のAOR、MTV世代ならすっといとも簡単に受け入れられるはず。そして、病みつきに。その後は...当時のレコード、CD漁り始めたりしている自分がいる。スペクトラムは帰ってこないのか? (視聴は→角松敏生 OFFICIAL SITEから)
Fankacoustics

Fankacoustics

このアルバムに関しては、全曲解説つき。(とあるサイトBBSに寄せたものを再掲します。)いや、ちょっとかなり恥ずかしいので、ほんとに興味のある方だけ、そっと覗いてみてください。
 
 
アルバム収録の各楽曲についてのあくまで個人的感想です。
その前に全体的な感想を書いておきます。
 
SolidとElasticに分けられている意味であるが、一般的な意味としてはSolidは堅い、堅実的なものであるのに対し、elasticは弾力的、適応性が高いという意味を持つ。おそらくこのことはコンサート等のライブにおいて、Solidサイドの曲はビッグバンド編成で今回の編曲どおりに演奏されることにおいて最大のパーフォーマンスが得られる楽曲であるのに対し、elasticサイドについてはその場の雰囲気に合わせたセッションバンド編成で演奏されること前提として書かれたものであることは周知の事実であることに加え、solidサイドの曲はある意味「確実に売れる」定石をパロって、あたかもアンチテーゼのように作られた作品と感じられた。
なお、コンサートの本数がsolidサイドに比べelasticサイドの方が多く設定されているのはもちろんこのヒットづくりの定石を打ち破る形で作成されたこのサイドはより多くの人とライブで接することにより浸透し、また熟成されるべきものであると考えられるからでしょう。そのあたりはアガルタの売れ方がじわじわとしたものであったことからも当然といえば当然ではないでしょうか。また、このelasticサイドの日本のリスナーの受け入れ方如何により、今後のミュージッシャンがどのようなアプローチをすべきかを見ることができるのではないでしょうか。つまりよく氏が述べている「ついてこれる奴だけついてこい」というのも、音楽を真に、かつファミリーで、地域で楽しむというある意味今のサッカー界が目指している方向性について、音楽においてもその方向性が見出せるかどうかの孤独な挑戦に思えてならないのですが。ファミリーを大事にするという点では、彼が、サンリオピューロランドの出し物に楽曲を提供したり、オリンピックに提供したこと等の一環であると信じたい。
 
Solid Side
1. VIEWS
いきなりのホーンセッションではじまるこの曲はこれまでの氏の王道的アレンジであり、自らへのオマージュのようである。まずは、自分をパロってみるかというところか。まるで、お前らの角松サウンドってこういうイメージだろうと言っているかのようである。この曲の支持が他の曲に比して少数派となりつつあるのであれば、彼の進化が間違いなかったことへの証明となるが、現在でもこの曲の人気が高いようであれば、そう簡単には向こう側へは渡る訳にはいかなくなるのではないか。
2. Have some fax
なぜ氏はこの曲でキムタクっぽい歌い方をしたのだろうか。それと、「have some fxxk tonight」と 終盤連呼するところ。「もう、女性ファンだけを意識してはいませんよ、野郎どもどうよ」というメッセージだろうか。この曲のon airは当然無理?。
3. The night with you
この曲もセルフパロディぽいなあ。歌謡曲funk(=fank)炸裂といったところか。これは角松オリジナル路線でっせと氏の叫びが聞こえる。火曜サスペンス劇場再来ですかねえ。セールス的にも氏がもっとも売れていたころ...あのバブル時代はもう来ないということかなあ。ダサい歌謡曲に終止符を打ってしまった氏の功罪は大きい。この後真のピンでのアイドル歌手って誰かいたっけ?サザン、オフコースを聞いてるのは田舎者でダサくて、おしゃれな人間は角松を聞くという風潮があった時代が懐かしい。女の子を誘い出す理由に角松liveつかった人結構いるでしょ?(原田真二佐野元春では今一食いつき悪かったもんな...。)これだけ回顧させる楽曲も珍しいなあ。
4. Hospital
クラッチから始まりシンセの導入と80年代のAORをふんだんにちりばめ、ベイベを連発、イージーリスニングサウンド懐かくかつ心地よい。米国西海岸サウンドこんな感じのたくさんあったなあ。また、この曲杏里ファンがすごくよろこびそうだよね。この手の音にビブラフォンは定番でしょう。80年代当時だったらFMや洒落たお店で当時のブレバタのようにパワープレイされていたに違いないでしょう。でも今でもラウンジやオープンカフェでこんな曲が流れてきても気持ちいだろうと思わせるところが氏の計算か。でも、やっぱり今目指すところとは違うのかなあ。こんな感じの曲でアルバム作れば今でもそこそこ売れるという氏の自信が垣間見られる小粋な小品に仕上がっている。
5. My Sugar
あからさまに往年の「The Knack」の唯一の大ヒット曲「My Sharona」をタイトル及びさびまでパロった作品であり、曲中にもパロって遊びまくっている曲である。詞中の「チ○ロ」(=砂糖のまがい物)を含め、世のまがい物をコケにしまくっているところ、爽快でもある。しかし、この曲に仕掛けられた数々の仕掛けをどこまで楽しんでいるかを試されている気も大いにするが、単純に楽しんでしまおう。しかし、音楽オタの世界であることも間違いないですな。山下達郎氏がこのような曲を作った場合は30分くらいうんちくをラジオで語る様子が浮かんでくる気がするのは私だけ?
6. How is it?
この曲、タイトルからして挑戦的だなあ。どうって言われても技術レベル高すぎでっせ。参りましたというしかないですよね。ライブでどうやって再現するんだろう。このあたり、ビートルズの「St. Pepers lonely hearts club band」や「white album」と課題としては一緒だよね。すげえ曲作ってもライブでやれないんじゃつまらないよねといってる気がする。(ちなみにPaulはSt.Peper’sやwhite Albumの曲をライブで最近ようやく再現した。そこまでに40年近い年月がかかってしまったのだが...。)当然この曲はライブでできちゃったりするんだろうけど...。つまりライブで再現できるぎりぎりの曲ってことで。でも限界を突き詰めていくことには本当に意味があるんだろうかと自らにも問いかけているような気がする。...それに最後の「○○ちゃんが好き...ハートだ。」でしょ。このハートって言葉、おそらく手のポーズとともに、幼少期の子供が発信する最も強烈な言葉(メッセージ)。自分の好きな人はハートで、嫌いな人は×で、まあまあの人は○で、よくわからない場合は△。子供がいるか対話の機会がある人ならおそらく誰でも知っている恐ろしい言葉。ハートもらえないと結構つらいんだよね。角松氏、本当は自分のファミリーいるのかなあ、それともそんな家族を持ちたいという気持ちが潜在的にこの曲に現れたのかなあ。この曲、ハートあると思いますよ。でもライブでんもバイオリンは「弦一徹さん」でないと、この叙情あふれるソロは無理なような気がする。それこそハートなしになっちゃいそう?。 
7. Believing
出だし、何これサザン?ってびっくりしますよね。でも唄が始まるとやっぱり角松節。やっぱりacousticもいれとかないとって、弾き語りっぽいのをアレンジとしてはいかにも海辺っぽくつくっておいて、詞はそうじゃないというなんというアンバランスないやらしいことをするんだろう。でも夕焼けがしっかりと瞼に映ってくるあたり、心にくいですよね。転調部でもサザンぽくしているし、そして最後にwest coastサウンド王道のファルセット。勘弁してください。泣いていいのか笑っていいのかわからなくなりまする。
8. ハナノサクコロ
ここまで、見事に達郎をやると、もうあきれるしかない。最後に入る多重録音でのコーラスなどは抱腹絶倒の極み。これまで決して角松氏がすることなかった「アーアーアー」の大合唱を録音している際、彼はどんな気持ちでいたのだろうか。結構これ気持ちいいかもしれないと思っていたりして。また、タイトルをカタカナにしたのはスガシカオ氏へのメッセージか?

Elastic Side
1. ultima viagem - I see Ya
これから旅に出発するんだという雰囲気をおもいっきり詰め込んだ感じ。声がとても楽しそう。特に「見上げてるだけさ。」と歌い上げてるところはパーフェクト、きっと角松氏も唄いながらさぞ楽しかったことでしょう。これぞAcousticですか。
2. What a beautiful day
アンコールの最後で聴かせてくれそうな曲、みんなで声をあわせて唄うと気持ちいいんだろうなあ。この曲を一緒に唄う為だけでもコンサートに参加したくなる曲。日本にいてコンサートに参加出来る人がうらやましい。コンサートにあわせて一時帰国しようかな、昨年のリベンジの時みたいに。
3. 真夜中模様
jazzyな雰囲気で始まるこの曲はアダルトコンテンポラリーミュージックの王道ですな。1980年代、小洒落たお店でグラスを傾ける際にもっとも好まれた感じ...みなまでは語りません。もしくはそぼ降る雨の夜のドライブ、雰囲気でてるなあ。スティーリーダンでも今夜は聴いてみようかな。NYに行きたくなった。
4. トナカイの涙
今の角松氏は幸せそうで、しみじみとしたバラードがとても優しく感じる。エンディング間近のピアノのフレーズ、どこかで聴いたことがないですか。確信犯だなあもう。クリスマスって窓の曇りと暖かい部屋、そして家族の優しいぬくもりがいいですよね。これで幸せになれる...。
5. POLE TOWN
初秋からはじまり、秋の晴天、そしてクリスマスから降雪の冬へ、季節めぐりもこの曲で終わり。憎らしい構成ですよね。脱帽です。本当に来ない君を待っているのでしょうか。いいえ、君はきっと来るよね。
6. Wrist Cutter
あれ、これアガルタ、はじまっちゃった?って感じ。閉じこもった冬から春への解放かなあ?ふたたび地底から蘇り、病める人々を救うのであった。キタローさんも参加して!
7. LIVE
崩壊の前日を彷彿させるイントロ、角松氏が思いを込めるときにはやっぱりこんな感じになるんですね...でもこれが心に染みてくる。バラードの王様健在なり。そして伴奏はやっぱり友成さん。みんな元気になろうね。
8. もう一度・・・ and then
新しいアレンジには賛否両論あるみたいだけど、これからみんなの街にいってまたやるよという気持ちがビシビシ伝わってくる。コンサートオープニングでもエンディングでもいいからぶちかましてくださいな。この曲を聴いているとなぜか顔がゆるむでしょう。懐かしい人と久しぶりに待ち合わせして遠くからその人を見つけたときみたいに。

後書き
elastic sideの曲は本当にライブでじっくりと聴き、また一緒に口ずさみたい曲ばかりで、かつ、人の心を癒す気持ちに満ちているように感じます。殺伐とした最近の状況を憂い、なんとか明るく幸せな気持ちに少しでもなれないかという氏の優しさや想いがじわじわと個人的には伝わってきます。きっとこれから始まるコンサートでそれをより一層感じることが出来るのではないでしょうか。コンサートに参加できる方々が正直言ってうらやましいです。多くの子供の心をとらえて離さない「イルミナント」やNHKの人気音楽番組「まちかどドレミ」でもオオトリで使われているお遊戯(ダンス)ソングの定番である「WAになっておどろう」のような国民的うたがこのなかから生まれることを信じてやみません。今でも修学旅行の旅のしおりの歌本て存在してるのかなあ。さあみんなでうたいましょう。