ボンジュールという言葉

フランスに暮らすようになってしばらく経ちますが、一つだけ悔しいことがあります。
電話を掛ける際に「ボンジュール」と第一声をこちらから発するのですが、それだけで相手には「あ、こいつはフランス人ではないぞ」と判断されてしまい、多くの場合は英語で、また、時によっては日本語で返事されてしまうことです。
「ン」の部分で鼻のほうを意識するとか、「ジュール」の「ル」のところを上あごから鼻に掛けて息を押し出すとかいろいろ本物っぽく工夫をしてはいるのですが、どうしても見抜かれるというか聞き抜かれてしまうのです。
これだけは早く克服してしまいたいと思っています。
ところで、よくフランス人はフランス語でしか応対しないいやな奴みたいなことが書かれていたり聞いたりするのですが、フランス語しか話せない人々(特に年配者に多い)を除き、そんなことはないのではと思ったりします。それよりも、フランス語も英語も話せない移民の人々の方が冷たいというか会話にならなかったりするので、困りものです。
なので、純粋なフランス人であれば、最近ではフランス語やそこそこの英語は出来ますし、日本語の話せるフランス人もパリにはとても多いので、
話しかけるのであれば、
(1)年寄りよりも比較的若い人であり、
(2)いかにもフランス人らしい人
を選べば、かなりの確率で話が通じますので安心してください。
ということは逆に、アラブのお店(ちょっとした果物や日用品を置いてあるお店)やスーパー、マダムの経営するお店(パン屋さんや美容院、小さな薬局など)では、フランス語しか通じないという覚悟が必要です。
これは、日本のお店で日本語しか通じないのと同じですよね。
ところで、ところで、finalventさんのこの記事(2005-03-17)の元ネタとして、
余丁町散人さんのところにhttp://homepage.mac.com/naoyuki_hashimoto/iblog/C2000001874/E1990357757/index.htmlという話があるのを知りました。
パリ生まれパリ育ちの余丁町散人さんの奥様の本屋での出来事(本のありかを尋ねたら、まずはボンジュールからみたいな嫌みを言われたとのこと)から、フランスは最近ちょっとおかしくなっていて、ポリティカリーコレクトネスがひどいというようなお話ですが、これにはちょっとそうかなぁと不思議な感じがしました。
お店の規模にもよるのですが、デパートやスーパーみたいなところでなければ、お店に入るときには普通に「ボンジュール」(夜ならば「ボンソワー」)と言いながら店に入ります。
もしくは、店に入るとすぐに、お店の人に「ボンジュール」と声を掛けられます。しかし、ただ、それだけのことで、特にその後会話を続けなくても可です。
日本でもお店に入ると「いらっしゃいませ!」と声を掛けられますが、あれと同じような感じですね。
話は戻って、この余丁町散人さんの奥様の件です。
日本のお店のやりとりのテンポは欧州のそれと比べ、かなり速いというかせっかちです。逆に言うと、欧州、中でもフランスでのテンポはとてもゆったりしています。これは小さなお店だろうと、大きなスーパーやデパートのレジでも一緒で、日本の数倍時間がかかります。が、しかし、それに人々がいらついたりすることはなく、それが当たり前のように時間が過ぎます。なので、日本のテンポに慣れ親しんだ方がレジに並んだりしたらそうとういらつくのではないかと思います。(私も当初はそうでしたが、今では気にならなくなりました。)
これはおっさんの勝手な憶測に過ぎないのですが、フランスの状況が年々変化しているのではなく、奥様が日本流というか日本のテンポに慣れ親しんでしまったのではないでしょうか。
日本のテンポで探している本にたどり着きたい気持ちが、店員の「ボンジュール(こんにちは)」の挨拶にいらだちというか過剰に反応してしまったような感じがします。
かわいい店員の女の子に話しかけたときに「ボンジュール」と会釈されると気持ちのいいものですし、いい男がレジにいるとその子に「ボンジュール」と挨拶されるのを楽しみにしている奥様方もいるようですよ。
ちょっとこちらで感じていることと違うような感じがしています。といっても受け止めかたは人それぞれですね。