finalventさんの改革の私的FAQ ver1.1 - finalventの日記について

id:finalventさんは、

1 日本を今改革すべきだと考えるのはなぜですか?

 基本的にはこの問題は経済の問題ではありません。日本の政治風土の問題です。

 この問題は海外からの視点のほうがクリアに見えるでしょう。海外の視点の代表として、フィナンシャルタイムズ”The Stakes in Japan's Vote”(参照)では、次のように、この改革を経済の問題ではなく、民主主義の問題として提起しています。たしかに、今回の選挙で反改革派が強い力をもてば、日本の民衆は政治改革というものの可能性を見失うことでしょう。
 This would hand victory to the anti-reform rebels and thereby entrench the depressing lesson that a reform-minded programme with a clear-cut ideological stance is an electoral liability in Japanese politics. Japan's democracy, not to mention its economy, would emerge impoverished.

とされています。
 
①フィナンシャルタイムズ”The Stakes in Japan's Vote”は引用記事を見る限り、

8月11日付の「Koizumi's gamble」の誤りでしょう。

ところで、そのファイナンシャルタイムズの記事ですが、この文頭の"This"の部分に該当する記事が引用されていません。
その部分を以下に引用します。

The real risk in Mr Koizumi's move, however, lies in the possibility that neither the LDP nor the DPJ win enough seats to form a government. Mr Koizumi would then probably be replaced with a compromise candidate as leader of the LDP, who could woo the post office rebels back in order to form a government. This would hand ...

民主、自民両党が過半数に達しなかったときのことを指しているようです。「反改革派が強い力を持つ」というよりも、「妥協の産物としての候補(compromise candidate)」が自民党の総裁に就くことを指して、民主主義の問題と提起していると読むことが出来るでしょう。

②ファイナンシャルタイムズの記事を引用されるのであれば、8月9日のこの記事もネットで物議を醸していますよね。

Junichiro Koizumi, Japan's prime minister, has lost the vote on his grand scheme to privatise the country's post office with its vast savings pool and will go to the polls. For now, the village-pump communitarian face of Japanese conservatism has won out over anti-bureaucratic, privatising radicalism. The global finance industry will have to wait a little longer to get its hands on that $3,000bn (£1,700bn) of Japanese savings. (http://news.ft.com/cms/s/f4a2fd10-0871-11da-97a6-00000e2511c8.html

確か、"get its hands on"の解釈を巡って議論があったと記憶していますが、成句としては「手に入れる」が一般的な理解だと思います。まぁ、こういう海外の見方もあるということでしょうか。もちろん、これは世界の誰かの懐に入るという意味ではなく、世界市場に資金が流入するという意味になると思いますが。
 
続いてfinalventさんは、

またこの点について、かつて小泉が登場したとき、その失望を次のように表現した、日本学者ウォルフレンの「ウォルフレン教授のやさしい日本経済(カレル・ヴァン ウォルフレン)」(参照)の示唆も参考になるでしょう。

とされていますが、一方で、かつてPaul Krugman(クルーグマン)さんは、供給面もさることながら、需要面の問題を重要視されていたように思います。
Saving Japan
山形浩生さんの日本語訳(特にP. Krugman "FURTHER NOTES ON JAPAN'S LIQUIDITY TRAP" Japaneseあたり)が一時話題になりました。
 
内外問わず、いろいろな視点があると思います。
 
ところで、
2.で

実際、政府案では、郵便事業ユニバーサルサービス(国家のどこでも同じサービスを保証する)という国際的な制約を守るために、実質は民営化を行っていません。

とされていましたが、UPU条約を「国際的な制約」とされるのはいかかでしょう。
ユニバーサルサービスの義務化は1999年の万国郵便大会議で万国郵便条約に規定された比較的新しい義務であり、日本国として署名し、国会でこれを含む追加議定書等の締結を承認しているのですから、制約という表現はなじまないと思うのですが。
 
余談ですが、この締結の際に「郵便業務」と「小包郵便業務」が「郵便業務」として一元化され、条約上不可分のものになったようです。さらに、同大会議で、郵便金銭業務開発戦略が策定され、ここには、「UPU加盟国における郵便貯金業務の導入・発展の促進」が記載されていたようです。このあたりの事情(制約?)を勘案しながら法案化作業を行うのは大変だったのではないでしょうか。
 
ご参考まで。
 
<追記>
J2(id:J2kawa)さん、ご無沙汰しております。コメントありがとうございました。
明日(本日)より、長期メンテナンスに入りますので、ブログはしばらくお休みです。
パチンコ屋さんの新装開店前の閉店出血大サービスみたいな感じと思っていただければ...えっ、あんた出血してるのか?と突っ込まれそうですが、睡眠不足と腱鞘炎に悩まされております。音楽&映画鑑賞ペースもガクッと落ちてしまって...。